ひぐらしのなく頃に解 第十七話
白川公園転落事故。後に2年目のオヤシロ様の祟りとして雛見沢連続怪死事件に組み込まれることになる「不幸な事故」。
その場に一人残されていた沙都子は入江診療所に運び込まれていた時点で既にL5を発症していた。のどをかきむしる末期症状こそ出ていなかったが、いつ疑心暗鬼に駆られて凶行に走ってもおかしくない状態であることに変わりはない。当然のように解剖計画書へのサインを求めてきた鷹野に入江は愕然とした。その用意周到さもさることながら、対応マニュアル通りとはいえ、平然とこんな幼い子をサンプルとして扱おうとする彼女に嫌悪感を覚える。
しかし、既に一人解剖しているのに今更良心の呵責を覚えるのか?サンプルの解剖は必要不可欠。研究とは目に見える結果が伴わなければ認知されない。鷹野の言うことはいちいちもっともだった。
雛見沢症候群?女王感染者?この人は一体何を吹き込まれてきたの?なんで、みんな寄ってたかって梨花を特別視しようとするの?
今でさえ、梨花はオヤシロ様の生まれ変わりだと盲信する老人達に甘やかされて、時々とんでもない行動をすることがあった。普通の子なら叱られるべきところで私が梨花を叱ると老人達はこぞって梨花をかばう。それが続く内に梨花はすっかり私の言うことを聞かなくなった。母親が娘を躾る、そんな当然の義務と権利を私は奪われていた。
入江先生に唆されて妙な使命感に燃える夫とそしてさもそれが当然というように達観した態度で進んで生け贄になろうとする梨花が全く理解できない。私の反対の言葉に耳を貸すこともなく二人は入江先生の研究に協力することを決めてしまった。
母親が娘を心配する。そんな当然の権利も私にはないのだろうか?
子供は親の思い通りになる人形ではない―育児書に諭されるまでもなくそんなことは理解しているつもりだ。私はただ、娘と「普通の親子」でありたいと願っているだけなのだ。そんなささやかな願いさえも私には許されないと言うのか?
父は善人だった。そして家庭を大事にする良き夫であり良き父親だった。しかし、ある日を境にその父の性格が一変した。母にわめき散らし暴力を振るい、挙げ句町でつまらないケンカを売って返り討ちにあってのたれ死んだ。母も心労が祟って後を追うように亡くなった。
父の豹変のきっかけは頭に当たった角材だった。今となっては確かめようもないが、父の豹変は脳障害が原因だったのだろうと思う。そうでなければこの豹変ぶりは説明が付かない。だから私は脳神経外科医を志した。自分と同じ境遇の人間を作らないために。父のように病気に尊厳を奪われた人を救い、尊厳を取り戻させるために。
入江所長は確かに天才だった。女王感染者の献身的な協力があったとはいえ、たった数年で雛見沢症候群の病原体を特定し、抑制薬の開発に着手できたのはひとえに彼の才能と熱意の賜と言えた。惜しむらくは倫理観が強すぎること。それさえなければ、もっと劇的に研究は進むに違いないのに。この期に及んで今更、何を躊躇うというのか?自らの才能に枷を付けて無駄な感情に頭を悩ませるこの男の姿勢は歯がゆいばかりだった。
私の体を調べ、抑止薬の試薬はとっくに出来ているはずだった。なのに入江は慎重になる余りそれを沙都子に使おうとしない。このままでは沙都子を待ち受けるのは死しかない。少々強引でも急かす必要があった。私が沙都子を想う心を、命を大事に思っている入江が抽出して作った薬なのだ。それが効かないわけがない。作ったのが鷹野だったら?
…それは御免被りたいわね。
緊急マニュアルの草案はすんなりと受け入れられた。お爺ちゃんの作った資料を政府の高官が食い入るように読んでいる。お爺ちゃんと私は着実に神へ到る道を歩み続けていた。そんな矢先―
雛見沢症候群抑止試薬・C103の投与実験は成功といえた。このまま、投薬とカウンセリングを続ければ沙都子ちゃんはきっと日常生活に戻れるに違いない。鷹野さんは解剖できなかったことに不満を漏らしていたが、優先すべきは沙都子ちゃんの治療だ。それより当面の問題は執拗に沙都子ちゃんに面会を求める大石の方だった。事故の真相がどうあれ、それを思い返させることは沙都子ちゃんの症状を悪化させるだけだ。
鷹野さんが山狗に命じて、この件を事故として処理してくれて胸をなで下ろしたのもつかの間―
季節の変わり目で梨花ちゃんが風邪を引いた。高熱がなかなか下がらなかったため念のため診療所に入院させていたのだが、あろうことか、梨花の母親はこれを私たちが怪しげな実験をしていたせいだと罵り、協力的だった父親をも用意周到に言い伏せていたらしく研究の協力をあと3ヶ月だなどと世迷い事を突きつけてきた。巫山戯るな。たった3ヶ月で何が出来るというのだ。その後、女王感染者無しでどう研究を続けろと言うのか?
入江は弱気でまるで役に立たない。何か打開策はあるはずだ。何か…
オヤシロ様の…祟り…
障害は取り除かれた、私は勝ったのだ。母親には先代女王感染者に相応しい栄誉を与えてやるとしよう。これでまた研究は大幅に進むに違いない。笑いが止まらなかった。しかし…破滅は既に目の前に迫っていたのだ。
小泉のお爺ちゃんの死。それはサイコロの1だった。それを起点に全ての目が1へと転じる。お爺ちゃんが死んだ途端、政府の高官どもが揃いも揃って手のひらを返し研究の終了を突きつけてきたのだ。そればかりかあれだけもてはやしていたお爺ちゃんの資料を笑い飛ばし、お爺ちゃんを愚弄した。お爺ちゃんの研究は再び踏みにじられることになってしまった。私のせいで…ごめんね、お爺ちゃん…三四負けちゃった…
失意のどん底にいた私に声をかけてきた女。野村と名乗るその女は全ての絡繰りを明かしてくれた。小泉のお爺ちゃんの後釜を巡る派閥間の利権争い…そんな研究の価値も理解できない愚か者たちのスケープゴートにされたのだと。
こんな時に近づいてくるような輩がまともなわけがない。これは間違いなく悪魔のささやき。身をゆだねれば待っているのは破滅…面白い。神め、また私を試そうというのだな?乗ってやろうじゃないか。勝つのは私だ。それまでせいぜいその椅子の座り心地を惜しんでいるがいい!
それぞれの思いを乗せたカケラ達が集まり混じり合い互いに影響しあって世界が紡がれていく。最後の戦いの舞台は整いつつあった…
入江の過去とか梨花の母のことに触れてくれるのは嬉しいんだけどホントに触れるだけなのでかえって欲求不満に。スルーされるよりは遙かに良いんだけど。
梨花の母はヒス起こしっぱなしだし。デザインは良いのに残念だ。一話限りじゃもったいないので特典映像か何かで奉納演舞をやってくれない物か。もちろん巫女姿で。
雛見沢症候群の全容解明を目指す鷹野と治療優先の入江の確執。鷹野にとってはお爺ちゃんの論文の正しさを世間一般に知らしめ、お爺ちゃんの偉業を歴史に刻み込むのが目的であるのに対し、入江の目的はあくまで患者を救うこと。だから雛見沢症候群が闇に葬られようと、その患者の全てを救う手だてさえ確立できればそれで十分。
共に研究をしていて入江が天才だと分かるからこそ、治療ばかりに力を入れて医学の闇の部分から目を背け続ける偽善者ぶりが許せない。何故、その才能を全容解明の方に費やしてくれないのかと。
野村、まさかこんな姿だとは…ぱっと見全然目立たない、背中にナイフを隠して裏で陰謀を巡らすタイプだとばかり。そんな野望でぎらぎら輝いている目で接触されたら、怪しいと思わない方が無理だ!!
鷹野もそれは分かってるようで。そして、彼女が自分を利用しようとしていると分かった上であえてその話に乗ることに。神に挑まんとする人間がタダの人間を恐れてどうするって考えなんだろうけど…果たして賽の目はいくつを示すのか。
次回はアニメで見たかったシーンが目白押しのようで楽しみ♪
以下、ネタバレ白字反転。
梨花の母、随分割を食っているなぁ。梨花を愛するが故の厳しさがその娘に理解されず疎まれてしまう悲劇の人。周りは無責任に梨花を甘やかすが、それでは梨花はダメになってしまう。梨花の将来を思うからこそ、梨花が間違ったことをしたら叱ってやらないといけない。紛うことなく、誰よりも梨花のことを考えている立派な母親なんだけど、生来の激情家なので、周りはヒスを起こしているようにしか見てくれないという(T-T)
…ここまで書いてて、それってうみねこの夏妃さんのことなんじゃね?と思い至った(^^;
それはともかく、今、原作暇潰し編のTIPS「母の日記」を見ると涙が止まらない(T-T)
かたや、梨花の方は母のこととなると「そりが合わなかった」「あの人のことはどうでもいい」「無闇に騒ぎ立てるから。自業自得」と言いたい放題。そりゃ、羽入も泣くわ。そもそもの不仲の原因が羽入の存在を母が認めてくれなかったから、だったりするしな。
まあ、梨花の母への暴言は、どうしても救えないことに起因する精神防衛でもあるようだけど。
梨花の高熱。ホントにタダの風邪だったようだけど、脳脊髄液採取とか危険なことをした後だし抵抗力が落ちていたことも否めないような…二次感染には細心の注意を払っていたようだけど、その分、タダの風邪を甘く見すぎていたと。
バラバラ殺人の犯人と梨花母の末路はカットっぽい。犯人の方は病原体発見のための生け贄だったけど、梨花母に到っては入江の預かり知れないところで、先代女王感染者への好奇心と、研究を邪魔しようとしたことへの個人的恨みで鷹野がどんな仕打ちを施したかは…想像にお任せします(--;;;;
その後に訪れたサイコロの1と運命の反転は、越えてはいけない一線を越えすぎたことへの天罰だと考えると、ここに入るのが妥当かな。
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