ひぐらしのなく頃に解 第十四話
前頭葉?私の問いかけにお爺ちゃんは微笑んで答えてくれた。今日のお爺ちゃんはとても機嫌がいいようだった。まだ私には難しい話だったが、一生懸命理解しようと努力した。でも、一つはっきり分かった事がある。この研究が認められればお爺ちゃんは神様になれるんだ。
両親の突然の事故死。それは私の人生を地獄の底へと突き落とした。父は恩師である「高野一二三」先生を頼るように言い残してくれたが、戦争で親戚の居なかった私は、施設に入れられることになった。そして、その施設での生活はまさに地獄という形容にふさわしかった。
日々の虐待、体罰、悲鳴。こんな施設にいたらいつか殺されてしまう。みんなそう思っていた。そしてあの日。仲間である恵理子に誘われて、私たちは施設を脱走したのだ。
みんなバラバラに逃げれば、運が良ければ逃げ切れるはずだった。山向こうの施設は天国だという。そこに辿り着けばきっと…でも、全員が辿り着けるわけがないことは分かっていた。何人かは捕まってしまうだろう。逃げ切るには犠牲が必要だった。自分には追っ手が来ないことを祈りながら走る。もし捕まったら…考えたくも無かった。
しかし、その役はどうやら私に割り振られてしまったらしかった。私の逃げた先はすぐに袋小路になっていて、施設の職員もあっという間に追いついてきた。捕まりたくなくて必死に抵抗する。偶然口に入った職員の指を噛みちぎり、私は―
お爺ちゃんの親友である小泉先生が、私をお爺ちゃんの研究の後継者と認めてくださり、資金援助をしてくれることになった。政財界の重鎮達はお爺ちゃんの論文をとても真剣に読み、驚愕し、研究の支援を約束してくれた。お爺ちゃんの研究が認められたことが何よりも嬉しかった。
女がトップでは体裁が悪いということで、不本意ながら研究所の所長には男を据えなければならなかったが、所詮はお飾り、実質上のトップは私であるという確約さえ取れれば問題はない。派遣された入江という男は神経外科のホープと目されこの若さで数々の論文を発表してきた天才だった。研究のパートナーとしては申し分のない才能をもったこの男が学会の論争に破れ、医局の隅で飼い殺されていたことは本人にとっては不幸だったのだろうが、私にとっては幸運といえた。まるで私のために用意されたように…全ては順調に進んでいた。
雨の中、必死に走る。今度追いつかれたらもう逃げられないだろう。なのに、私は足を滑られせ崖から転落した際に足を痛め、動けなくなってしまった。職員達の怒声が近づいてくる。お父さんは、不幸も幸運も長続きしない物だと教えてくれた。なのに今の私はどうだ。お父さんとお母さんが死んでから不幸な目にしか遭っていない。あの日、手に入れ損ねたお子さまランチの旗と共に、幸運は全て私の手からこぼれ落ちてしまった。おかしい。神様は平等なんじゃなかったのか?ならばそんな神様なんかいらない。不幸しか訪れない人生なんていらない。天罰でも何でも下すが良い。今すぐその雷で私を殺せ!
…でも、もし私を殺せなかったらその時は、今までの不幸の分、私を幸せにして…
さあ、やって見ろ!逃げも隠れもしない!田無美代子はここにいる!!
その瞬間…世界は真っ白に塗り潰された。
悪夢から目を覚ます。眼下に見下ろすのは雛見沢。お爺ちゃんと私の約束の地。もうすぐだ。もうすぐお爺ちゃんと私は神になる。決して消え去ることのない歴史の一部として未来永劫生き続けるのだ!お爺ちゃん、私はついに成し遂げたよ…
今回から、ついに最終章・祭囃し編に突入。ということでOPに羽入鬼神モード&制服モード降臨。鷹野の後ろ姿もモザイク解除。
梨花の手招きに一瞬躊躇した後、微笑んで駆け寄る羽入が可愛いなぁ。
美代子も可愛いなぁ。そして、一二三も小泉先生も思ったより遙かにダンディーだし。この二人に可愛がられていた頃の美代子はさぞかし幸せだったことだろう。
施設の方は最悪の一言。脱出シーンが目明し編の詩音にかぶるところから見て、ここはルチーアの前身だったりするのだろうか?
ここでの虐待経験があるから鷹野は沙都子に共感を持っている節が。
みんなで逃げれば助かる確率が上がるという恵理子。それは誰かを犠牲にすることを前提にした上で、その誰かに自分が当たらない確率を上げると言うこと。でも、その確率は恵理子も含め平等で、誰がどうなっても恨みっこ無し。全ては自己責任。
自分を信じろなんて全く言わず、メリットとリスクのみを的確に告げる姿勢はむしろ好感が持てる。
三佐と呼ばれて微笑みを浮かべる鷹野。お爺ちゃんが少佐だったことと三佐が少佐に当たることを言ってくれないと意味が違っちゃうよ?
時系列を皆殺し編に留めて鷹野の夢として語るのはうまいなぁ。ってことは来週、あのシーンが入る可能性も?
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コメント
鷹野の過去は、壮絶ですね。
投稿: ヴァンブレイス | 2007/10/14 10:16
>ヴァンブレイスさん
雛見沢を全滅させ、梨花を運命の袋小路に閉じこめ続ける鷹野の強大な意志の力は、それ相応の思いと経験によって培われているということですね。
投稿: 藤ゆたか | 2007/10/14 14:39