地獄少女 二籠 第十八話
あの人の記憶はほとんど無かった。私が物心がつくかつかないかの内に出ていってしまったから。唯一の記憶はおはじきで遊んだこと。でも、その記憶の中でもあの人は私に笑顔はおろか視線を合わせようともしなかった。
半年前、交際相手との結婚が決まり、幸せの絶頂にいた私はいきなり絶望の底に落とされた。今更、あの人が家に戻ってきたのだ。自業自得の交通事故で介護が必要な体になって。
しかも、あの人は感謝はおろか傍若無人な態度を取り、父と私を見下し、嫌がらせさえした。そして、今日。結婚が延期になったことで、私の我慢は限界に達した…
と、里奈視点では徹底的に酷い人間として描かれていた母。しかし、父の口から語られた真相は…
里奈は母の子ではなく、父が子供の産めない母の代わりに別の女に産ませた子供だった。そんな自分を母が好ましく思うわけがない。自分に手を上げずに家を出ていった母は大人の対応をしたのかも知れない。
にも関わらず、父は執拗に母に家に戻るよう説得を続けていたらしい。そして、母はそんな父を自己満足に酔っているだけだとなじり、車の前に身を投げた。
恨まれているのは自分たちの方だった。母は自分たちに復讐をしていたのだ。そして、この期に及んでも自己満足を続ける父に鬱屈した思いを募らせ続けていた。
最後まで、地獄送りの船の上ですら感情らしい感情を表すことのなかった母。その心中を唯一窺い知る事が出来るのは、母がずっと握っていたおはじき…それは里奈の唯一の母との記憶で里奈が母に渡した物だった。
色々考えさせられる、いかにも地獄少女的な話。誰が悪いかって言ったら、問答無用で父なわけだけど。母と里奈はその被害者だったわけで。特に母の心中を考えると、まさしくそれは本物の地獄すら凌駕するほどの生き地獄…
だから、父が母を地獄送りに出来ることが納得できなかった。何の恨みだよ?っていうか、流されるのはむしろ父の方なんじゃないかと。後を追って自殺するような雰囲気だったけど、それすらも自己満足にしか感じられないし。
父の自己満足に振り回された母と里奈が哀れでならない。
次回は今まで断片的に語られていた輪入道の過去とあいとの出会い。やっぱり主人を殺された恨みで復讐を続けていたところをあいに出会って救われたようで。
2/11 18:00追記
TB先のブログ様の記事を拝見すると父と母に対する意見が割れてますね。こういう風に様々な見解が出てくるところが楽しいところです。
で、私の記事中の誤解されそうな部分を少し補足。
「母は自分たちに復讐をしていたのだ。」と書きましたが、これも里奈視点の話。母の視点で考えると、母は里奈自身には個人的な恨みは無かったと思うのですよ。里奈自身に罪はない。ただ、父の裏切りの象徴として憎んでいた。そして、その自覚が有りながら、どうしても辛く当たってしまう自分自身が許せなかったのではないかと。
そして、里奈をこれ以上傷つけないために家を出た。それも自分が悪いように見せかけて。なのに、身動きが取れなくなって否応なく顔をつきあわせる羽目になり、自分の中の鬼をひきづり出され続ける…これが生き地獄でなく何だというのかと。
あのおはじきに向かって謝罪していたのは想像に難くないです。
母も父を愛していた。愛してたからこそ裏切りが許せず、その憎悪は100倍だったことでしょうに。今回の地獄送りに至ってはお為ごかしの二度目の重大な裏切り。救われません。どうにか地獄送りを免除してあげたいところですが、母自身は里奈に理不尽に辛く当たった罰として甘んじて…とか考えているのかも。悲しい話です。
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