あさっての方向。 第十話
ようやく誰にも迷惑をかけずに生きていける場所を見つけた―おそらくそう思っていただろうからだ。しかし、突然現れたテツに戸惑い、必死に自分を捜す姿を見て、自分は迷惑をかけ続けているんだとということ、ただ、それから目をそらして逃げているだけに過ぎないのだということ、そんな事実を突きつけられることに。
いたたまれなくなって、何故、そんなに必死に探すのか、見つからなかったらどうするのかと問いかけるからだ。テツから返ってきた答えは、好きだから見つかるに決まっている、と言う物。シンプルだけど、それ故に飾らない本心をさらけ出す言葉。
自分は邪魔者だからいなくなった方がいい、そう思いこんでいるからだにとって自分の存在を肯定してくれる言葉は何よりも嬉しいに違いない。でも、今のからだにとってそれは自分の願いが間違っていたと言われているにも等しくて。
急な大雨の中、足を滑らして転倒してしまったテツ。怪我自体は大したことはなかったが、今までの疲れからか熱を出して寝込んでしまうことに。
自分のせいだと責任を感じ、テツを看病するからだ。自分はここにいる。その一言を言いたくても言えず、からだはただ謝ることしかできなかった。
一方、尋は部屋でただ、からだが帰ってくるのを待っていた。探して欲しくないと言うからだの意志をくんで、信じて待ち続ける。とか言えば聞こえは良いけど、結局、拒絶されて傷つきたくないだけ。そして、自分がからだに必要とされているという自信を持てないだけ。
この、自分は相手の負担になっている。自分がいなければ相手は幸せになれる。という思考回路が、むしろ二人が兄妹だという証明になっている気もしないではないけど…
自分が必要とされているという自信を持てないために相手を思いやりすぎ、かえって相手を傷つけてしまう二人の心があさっての方向から今に戻ってくるには、包み隠さず好意をぶつけてくる存在が必要なのかも。
| 固定リンク
「終了・あ あさっての方向。」カテゴリの記事
- あさっての方向。 第十二話(2006.12.23)
- あさっての方向。 第十一話(2006.12.16)
- あさっての方向。 第十話(2006.12.09)
- あさっての方向。 第九話(2006.12.01)
- あさっての方向。 第八話(2006.11.25)



コメント